五倫書（寛文6年） 【判型】大本2巻1冊。縦267㎜。 【作者】不明（熊沢蕃山仮託）。 【年代等】寛文6年1月刊。［京都カ］伊吹吉右衛門板。 【備考】分類「教育」。慶安3年刊『心学五倫書』とは全くの別内容。熊沢蕃山の作とみられ、蕃山やその周辺の者による著作の可能性はあるが未詳。本文冒頭は「道徳の大本、万物の大祖あり。大虚と云。其大外なく、其小内なし。始なく終なきものなり…」を起筆して、『心学五倫書』の蕃山説を打ち消すために板行されたという体裁をとるのが特色。寛文期に『心学五倫書』蕃山撰作説の風評がかなり一般化していたことを示すとともに、この風評が、当時政治的に微妙な立場にあった蕃山に、少なからぬ不利益をもたらす可能性があったことを暗示している。蕃山自身も、寛文12年刊行の『集義和書』初板本で、「五倫書（心学五倫書）」には本来の作者があり、それは蕃山の「生まれぬ前に出たる書にて、七十余の人は五十年前に見たると申者御座候。我等の書に極り、此間批判の書まで出申候」と述べているほどで、蕃山にとっては極めて迷惑な話だったようである（山本眞功『『心学五倫書』の基礎的研究』参照）。★原装・題簽付・美本。稀書。